何も言わない統計学

身近な事柄を題材とした統計に関する記事を書きます。

n回陽性的中率、n回陰性的中率の計算方法

1.n回陽性的中率の計算方法

 前回の記事では感染している事象をXnPCR検査を受けてn回全て陽性の反応を示す事象をY_nとすれば、次のように表すことができました。

n回陽性的中率(前回の復習)P(X\mid Y_n)=\dfrac{P(Y_n\mid X)P(X)}{P(Y_n)}
n回陽性的中率

ここで、感度をSe、特異度をSp、感染者割合をAとすると、

  • P(Y_n\mid X)=Se^n
  • P(X)=A (統計学では、これを事前確率と言います)

 P(Y_n)は、感染者が正しくn回全て陽性となる確率と非感染者がn回全て誤って陽性となる確率の和となるので、

  • P(Y_n)= P(X)P(Yn\mid X)+P(\bar X)P(Yn\mid \bar X)=ASe^n+(1-A)(1-Sp)^n

 したがって、 下記のとおり計算することができます。

具体的なn回陽性的中率の計算方法P(X\mid Y_n)=\dfrac{Se^n A}{ASe^n+(1-A)(1-Sp)^n}
 
 図で表すと下図のようになります。
 

f:id:statist:20210209212244p:plain

 

2.検査方法が複数個ある場合

 上述については、1つの検査方法のみの場合を考えていました。検査方法が検査1,2・・・n個ある場合には、感度SeSe_n(n=1,2・・・n)、特異度SpSp_n(n=1,2・・・n)として拡張すると、検査方法が複数個の場合についても下記のとおり計算することができます。

 

検査方法が複数個ある場合の計算方法P(X\mid Y_n)=\dfrac{A{\displaystyle\prod_{n=1}^{n}}Se_n}{A{\displaystyle\prod_{n=1}^{n}}Se_n+(1-A){\displaystyle\prod_{n=1}^{n}}(1-Sp_n)}
 

 

 
 
3.n回陰性的中率の計算方法
n回陰性的中率もn回陽性的中率と同様の考え方で計算できます。
n回陰性的中率(前回の復習)P(\bar X\mid \bar Y_n)=\dfrac{P(\bar Y_n\mid \bar X)P(\bar X)}{P(\bar Y_n)}
n回陽性的中率
具体的なn回陰性的中率の計算方法P(\bar X\mid \bar Y_n)=\dfrac{Sp^n (1-A)}{A(1-Se)^n+(1-A)Sp^n}